木簡総合コミュニティサイト [木簡ひろば] 奈良文化財研究所

木簡ワールドへの招待

古今の名探偵は、抜群の推理力で犯人を見つけ出す。

そして、得意の秘技で-「遠山の金さん」ならおとり捜査という具合に-犯人を追いつめる。


残念ながら、それほど華麗な技を持たない探偵たちは、別の方法を用いる。

たとえば、ゴミ箱をあさる。

そこには、表には出てこない事実が「捨てられて」いる。断片的だが、取り繕われていない「証拠」がある。

犯人を追いつめる決め手は、時に小さなメモだし、時に破り損ねた領収書である。


木簡というのは、まさしくそれらだ。

墨書された木片を、我々は「木簡」と呼んでいる。

木簡はたいてい、土の中から発見される。遠い昔、作られ、使われ、そして捨てられた。

幸運にも(あるいは不幸かもしれないが)たまたま土中の水分によって腐食から守られ、掘り出される。

残そうとして残されてきた記録ではない。捨てられたゴミで、断片的で、けている。

しかし、それゆえに、過去の様々な事実を、生々しく伝えてくれる動かぬ証拠なのである。


そう、だから木簡はたまらない。

過去というミステリーを、歴史のゴミ箱から解き明かす。

証拠となる小さな断片を、適切につないでいくには、目立たない様な情報にも目を配る観察力、問題点を見つけ出し検討できる洞察力や推理力や、それらを支える知識、そういったものが常に求められる。

だが、その作業に成功したある瞬間、眼前に知られざる事実が広がる。


我々も、歴史の世界のベーカー街に住もうではないか。

いや、ホームズよりコロンボを目指すことにしよう。

どういうわけか、歴史学者だの考古学者だのという輩には、風采のあがらない恐妻家が多い様なのだ。

                                  (馬場 基)

風采があがらない人が木簡を調査する様子

※木簡の調査風景